Early Times & Soda #1

背中まである髪の毛をバッサリ丸めて(強制)新しく入った中学校の空気に馴染めず、今で言う不登校ぎみだったヨシオ(仮名)。
登校したらしたで先生に殴られ、授業を受けてみるがサッパリ解らず、女子には笑われ、強制加入の部活から逃げるように帰ろうと駐輪場へ行ったらタイヤがカッターで切られていた。
歩いて帰れる距離ではないので、近くの学校指定の自転車屋で修理してもらいヨシオは家に帰った。

夜、コンビニで買った総菜パンを食べ、喋った事のない兄の部屋からアーリータイムズソーダ割りの缶を盗み一気飲みして寝た。

夜中、ヨシオがふと目を覚ますとつけっぱなしだったテレビで海外のバンドの演奏が流れている。
野外ステージでメンバー全員が革ジャンを着て、聴いた事もない激しいギターとドラムの音。
しばらく見入った。
ロックなんて無縁だったヨシオは一発でやられてしまい、毎週その時間帯にテレビをつけそのバンドが映るのをひたすら待った。
後に、そのバンドはRAMONESと知る。

それ以来、洋楽ロックを流すラジオやテレビを毎日チェックして、RAMONESが流れたらラジカセの録音ボタンを押しカセットに録音してはテープが伸びるまで聴いていたが、もっと聴きたい衝動はおさえられなかった。

どうにか親にねだり、いちばん安いCDラジカセを買ってもらい、バンド名とアルバム名をメモした紙を片手にCDショップへ行き、
ついにRAMONESのCDを買ったとき、ヨシオは無敵を感じた。

次の日から学校に登校するようにした。
ロックするには坊主頭では始まらない!
まず、定期的に開く生徒会議とやらで頭髪自由化をひたすらあげた。
ヨシオの発言がきっかけではないだろうが、数ヶ月後に校則が改訂され、男子の強制坊主は廃止になった。
次に、音楽室にギターがあるのを発見し、ギター部(部活ではなくクラブ活動)を作った。
幸い、ギターの弾ける先生がいたので認められた。
とは言ってもクラシックギターだが、ヨシオはとにかくギターが触りたかったのだから大成功だろう。
しかし、出る杭は打たれるのか、形だけ入っていた部活の先輩に呼び出されヨシオはぶっ飛ばされた。
ジャージに着替えると見せかけ部室に入り、ヤツの着替えで鼻血を拭いてそのまま帰った。
まるで負ける気がしない、次の日の復讐さえ楽しみに感じた。
その日の夜の総菜パンとアーリータイムズソーダはとてつもなく美味かった。


つづく
QLOOKアクセス解析